2011年10月アーカイブ

 このところお世話になっている診療所のある千本通りは、京都では由緒ある通りである。古代平安京のメインストリート、朱雀大路と大極殿はこの通りの地下に眠っている。古代の面影は町の名や大極殿その他の所在を示す案内標にみることが出来る。 御所が北東に移ってからはこの通りの周辺には信長の二条城、秀吉の聚楽第、徳川の二条城が建設され、武家勢力の権力の拠点となった。同時にこの通りの北側、上京区周辺は通称西陣として、繊維地場産業の集積地域に発展した。私の住まいもその地域の周辺にあり、以前は近くに機屋さんも工場もたくさんあったが、いまではその面影はない。解体される古い長屋から機織りに使っていた道具を頂戴して私の書棚の飾りにしている。
  千本通はその中心の通りで多くの飲食店、菓子屋、書店等、さまざまな商店が軒を連ねる商店街に発展した。地場産業が廃れ、高齢化が進む中でかっての賑わいはもはやない。しかし私のようなよそ者のまち観察の対象としては実に魅力に富んでいる。
 診療所の「数軒隣に一風変わった酒屋さんがある。店頭に並んでいるのはお酒ではなく、野菜やお米である。奥の棚には酒が並んでいるのだが、まず眼に入るのはざるに盛られた野菜だ。それぞれのざるに生産者の名前と値段が添えられている。京都は北の地域から野菜を売りに来る農家がたくさんある。「ふりうり」といわれる地産地消の販売方法が今でも生きている。おそらくそれらの農家から仕入れたものだろう。私も時々この店をの覗き、新鮮でおいしそうなものを買って帰る。酒好きの私が酒屋で酒も買わずに野菜を買っている姿を想像してほしい。この店以上に風変わりな光景ではないだろうか。
 「酒屋なのにどうして野菜を仕入れて売っているのですか」とたずねると、「おいしいお酒にあったおいしい食べ物をならべているのですよ」という返事が返ってきた。この次に買うときには料理の仕方も聞いてみよう。地場産業は衰退してかっての賑わいは失せたが、まだ人間的な香りのする通りではある。

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