2012年5月29日ーディートリヒ・フィッシャー=ディースカウ追悼ー

  ドイツのバリトン歌手、ディートリヒ・フィッシャー=ディースカウさんが5月18日に86歳で亡くなった。彼のリサイタルには残念ながら一度も出会えなかった。LPやCDで聴いていただけで、一度でよいから彼の肉声でしびれるような感動を体験したかった。かれが世紀の名歌手であったか、世界的な歌手であったかは私にとってはそうでもよいことだ。私にとって彼はドイツ歌曲という新しい領域での感動を引き出してくれた歌手のひとりであった。
 ベートーヴェン以来、F・シューベルト、R・シューマンと続くドイツの歌曲の流れは、ゲーテ、ハイネ等の詩との見事な共鳴関係をつくり出し、その解釈者としての歌手たちの感性を際立たせた。大学でドイツ語を習得し、ドイツ資本主義を研究テーマに選んだ私にとって、マイナーな言語に習熟したことことの悲哀を感じることもあったが、他方でドイツ歌曲を聴ける喜びを得た。
 ディートリヒ・フィッシャー=ディースカウさんの歌唱との出会いは私のこの喜びの出発点であった。最初に買ったLPはR.シューマンがハイネの『歌の本』から抜粋し作曲した歌曲「詩人の恋」であった。このLPはすでに手放してしまったが、CDで今でも聴いている。彼の歌唱で示される感情の高揚感、呻きにも似た苦悩の表現に今も感動させられる。

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このページは、kitanihitoが2012年5月29日 09:54に書いたブログ記事です。

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