都市を田園化する(1)ー六角農場でコーヒーを飲みながら考えるー

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 東洞院通六角上ルにあるショッピングセンター、八百一本館に食材を買いに出かけ、そのついでに3階のレストラン「セイボリー」でコーヒーを飲みながら、六角農場と名付けられた屋上農園を眺めながらのんびりとすごす。シェフのSさんや農場で働くQさんとお話しすることもある。これが私のお定まりの、私をいつも私を上機嫌にさせてくれる散歩コースの一つである。
 眺めながら、ドイツにいたころ経験した クラインガルテンの風景を思い出す。大都市の中心部に無数の小公園がある。市民が長期間で借り、ガーデニングや畑作りに利用したり、樹を植えて芝生にしている人もいるなど利用方法はさまざまだが、ドイツ、ドイツ語圏、さらには周辺の国々の大都市の重要な景観になっている。この制度がいつから始まったものか知らないが、おそらく市域が現在のそれよりも狭かった時代には郊外に位置していたのかもしれない。それが都市化の進展で市域が拡大してもその場所に維持されたので、都市の内部に包摂されるいまの姿になったのであろう。ドイツではおよそ100万のクラインガルテンがあり、460平方キロメートルにもなるという。首都ベルリンには2013年現在で67,961もあり、、住民100人当たり2という勘定になる。
 都市が内部に広大な農地を持ち、それが都市開発によって破壊されずに維持されている。週末にはクラインガルテンを整備し、そこで家族や友人たちとゆったりと過ごす、ときには通りがかりの異邦人を快く請じ入れる、それが成熟した都市の姿ではないかと思う。
 このくにの都市でも、かってはまちの中心部を出るとすぐに農村地帯が広がっていた。下水道が普及する以前には、農民が都市の中心部で肥料にするための糞尿、下肥を集めて回っていたものだ。それが日常の風景であった。農村地帯はあっという間に都市化に飲み込まれ、今日のような都市が無制約に拡大していった。
 IPCCの報告を待つまでもなく、温暖化による気候変動は誰にも明確に感じ取られるようになっている。二酸化炭素の排出量を大幅に削減するためには、その最大の発生源である大都市圏のあり方を再検討しなければならなくなっているのではないか。しかも大都市は自身が生み出す都市熱をもてあまし始めているではないか。コンクリートやアスファルトの舗装を壊して都市農場を再興することが必要だが、そのような都市改造はこのくにではもはや不可能に思われる。しかしそうであっても、いろいろな可能性を探ってみることは意味のないことではない。この農場の試みに、私は大賛成である。
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 ただ地球環境政策としてだけではなく、クラインガルテンがそうであるように、それにかかわる人、それを訪れる人を和ませてくれる。この農場にも若い人、子どもたちを含めて沢山の人びとが訪れている。おそらく畑仕事にかかわったことがある老夫婦が生育ぶりを観察しながら、手入れをしている職員と言葉を交わしている、そのような情景は心和ませる。そのようにいう私もそのカテゴリーに入る一人なのだが。食育の重要性がほうぼうで議論されているが、それは畑作りにかかわることから始めなければならないのではないか。(2014.6.10)

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このページは、kitanihitoが2014年6月10日 11:13に書いたブログ記事です。

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