2017年5月アーカイブ

2017年5月5日、岡崎古書市にて

 
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今年もまた東山の新緑に誘われて都メッセで開催されている古書市を覗いた。
 古書店を覗くのが好きになったのは、関西で働くようになってからだ。京都には大学周辺、寺町通、丸太町通等に古本屋が密集していた。大阪でも大学や旧制高校周辺にぽつぽつとだが、まだ残っていたし、釜崎周辺には企業が廃棄処分にしたり屑屋に出した書物が思いがけない価格で手に入る店がいくつかあり、よく覗いたものだ。このあたりは経済や企業関係の資料をあさる穴場で旧知の大先生と出くわしたこともある。阪急三番街にできたカッパ横町は仕事の帰りの格好の気分転換の場所だった。
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 沢山の書物から自分の求めている分野のものを発見するのは、視力が弱り体力が衰えた今では至難の業だ。まさに幸福な出会いそのものだ。今回の出会いは、写真に示した「アイヌ風俗」絵葉書である。この10年ほど、戦前のアイヌ関連の絵葉書が見つかれば買い求めている。今回のは8枚組の袋入り、1929年発行のものである。白老のアイヌ集落がやっていた「見世物」みたいな施設の絵葉書である。
 それにしても、アイヌを「原始人類」と呼ぶとは畏れいる。初めて聞く表現だ。興味をひくのは、外国人観光客に売るためか、英語の表記がある。アイヌを「アボリジニ」であるとしている。この表現は先住民の意味で、決して「原始人類」ではない。それともオーストラリアに住む「アボリジニ」を想定していたのだろうか。
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 私はこれらの葉書を興味本位で集めているわけではない。アイヌに強いた苛烈な収奪に次ぐ同化政策と差別は日本人の原罪ともいうべきものではないか。北海道に生まれ育った者にとっては特にそうだろう。先住民として認めるだけでアイヌに対する収奪と差別の原罪は許されるものなのか、歴史の書き換えは進んでいるのか、博物館の展示は変わったのか、この種の絵葉書を収集しながら私は問いかけている。
 旧知の古書店主に会場で出くわし、立ち話。話は私の最近の関心事、桑原武夫氏蔵書の処分問題に及んだ。どうもこの蔵書は最終的に屑として処分されたらしく、古書市場には出回らなかったようだ。この事件の悲喜劇について書いてみたくなった。

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