2012年5月アーカイブ

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  浜矩子さんの評論は楽しい。舌鋒鋭く迫り、一刀両断というにふさわしい明快さは魅力的である。多くのエコノミストと称する連中が現状肯定的な論説を振りまき、所属する企業の利益には触れまいとする態度で世に害毒を振りまいている中で、浜さんの批判的態度は立派である。
 本書を書店で手にして中身をよく吟味せずに買ってしまった。視力低下のなせる技ではあるが、中国経済につても相当の知識を持っておられるのかと驚き、興味をそそられたからだ。
 案の定、これは中国経済それ自体の分析ではなかった。看板に偽りありということだ。中国経済論を語ろうというのではなく、中国を手掛かりとしてグローバル経済の真相に迫るのが狙いであると第1章で明言しているから、良しとしよう。しかし、このような視点は一国の経済を解明するには不可欠のことではないか。その意味では本書は中国経済論を説いていると思う。否定される必要はない。中国経済、あるいは中国資本主義が直面する危機は、グローバル資本主義の段階の最重要構成要素であることによって進化しているのだから。GDPや工業生産高の比較で中国の位置を論じるのはやめようではないか。
 鄧小平の改革開放の大号令によって始まった海図なき船出はいまや転機を迎えていると言わざるを得ない。浜さんの書きぶりは中国資本主義の全体像を明らかにしていく上で示唆に富んでいる。
 アジアの多くの国が、一党独裁や軍部独裁、国家資本主義の体制を維持したままグローバル資本主義に組み込まれつつある。ベトナム、ミャンマーに始まり、いずれは北朝鮮へと続くに違いない。中国を分析することはこれらの国の将来を明らかにするのに有効であろう。改革開放政策は多国籍企業の低賃金労働力と資源を提供し、金融投機の機会を拡大するだけのことなのに、鄧小平が決断したように、もはやそのコースに身を委ねる以外には活路を見いだせない。しかし官僚制度と軍の保持する利権との矛盾が深まるのは避けられない。
 かって社会主義経済論をテーマにしていた研究者たち、マルクス経済学者たちはいったいどんな仕事をしているのだろうか。金太郎飴のように、どこを切っても浜矩子ではつまらないではないか。(2012年5月29日)

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