「連帯」と「学び合い」の経済学をめざしてー現代経済学批判ノートー

 グローバリゼーションの時代に経済学に求められているものは何か。
 危機の深刻さがさまざまな分野で論議されてはいるが,その解決策となると明確な答えはどこにも示されていない。答えはおろか,危機の全体像すら示されていないように思われる。
 グローバル資本主義の最大の特徴である投機による利得を例にとってみよう。この投機の構造を破砕しない限り「格差社会」などなくなりはしない。アメリカやヨーロッパの若者たちが果敢に戦いを挑んではいるが,残念ながら富裕層が投機のために所有する莫大な資金を収奪することなどおよそ不可能であろう。投機の抑制のために,またぞろトービン税導入が議論されはじめている。しかしこの施策とて税収を増やすために有効ではあっても,過剰資金を回収する手段とは到底なり得ない。批判を回避するために政治家たちが仕掛けた目くらましでしかない。トービン税はグローバルな規模で一斉に採用されない限り,資本の逃避を生み出すだけだ。しかも今の力関係では,アメリカ,イギリス,スイス等の金融的利得の巨大な国々がこの地球大的合意に参加するはずがない。それが実現出来るくらいなら,温室効果ガス削減の国際合意などとっくに実現出来ているはずではないか。
 既存の理論的枠組み,既存の理念にしがみついていては,もはや展望はない。新たな理念的,理論的転換が求められているのではないか。しかも転換が求められているのは,経済学をはじめとする社会科学だけではない。その基礎にある人間観についても転機にある。お互いが生存のために,人間とは生死を賭けて闘い合うものであるとする人間観はこの際捨て去らなければならない。この小さな地球の上で今のように個人から民族,国家に至るまで激しく争い,殺し合う事態をやめない限り,人類に未来はない。「ともに豊かになる経済」を構築するための理論と施策こそが追求されなければならない。これが私のこれからの仕事のライトモチーフである。
 このノートは,その問題意識の書きはじめである。次の三つの仕事,1)片岡幸彦・幸泉哲紀・安藤次男編『グローバル世紀への挑戦ー文明再生への智慧ー』(文理閣,2010年4月)に寄稿した論文草稿,2)2005年に本研究所ウェブサイトに公表したノート,3)地域文化学会機関誌『地域研究』第11号(2008年12月)に寄稿した書評から構成されている。1)の仕事は2)3)を基礎に仕上げられてたもので,かなりの重複がある。私の思索の過程を残す意味であえて再録した。(2012.1.22)

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このページは、kitanihitoが2012年1月22日 11:16に書いたブログ記事です。

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