戸籍制度は必要か

  この夏幕末生まれの亡霊が日本全土でさまよっている。
 住民基本台帳が日本の人口を正確に反映していないことが明らかになって外国メディアの嘲笑を買ったが、今度は戸籍制度の欠陥が明らかになった。国家の根幹をなす仕組みの筈がこのていたらくである。戸籍からの抹消は庶民には手続きが難しいのに、法務省が幽霊戸籍を抹消するというのだから恐れ入る。
 戸籍制度は現代に必要なのだろうか。不要論を唱える人が出てきてもよいのではないか。戸籍は古代以来権力者が人民を支配する制度であった。土地と共同体に結びつけ、大家族制、家父長制に基づく「戸」を単位に掌握する制度であった。その制度は身分制度と分かちがたく結びついて今日まで維持されているのだ。
 人間の移動が激しくなっている現代では戸籍と現住所の乖離はますます大きくなっている。戸籍をめぐる悲喜劇、戸籍法の期待の笑うべき実態を数え上げたらきりがない。
 本籍の提示を求めることは人権侵害につながるとして実質上禁じられている。明治初年に維新政府が人口調査もかねて作成したいわゆる「壬申戸籍」は身分差別を助長するものとして閲覧が禁止され、はたして保存されているのかどうかもわからない。祖先を幕末にまでさかのぼって調べようとしても役所の窓口で拒否される。これが戸籍制度の現実なのだ。
 やめようではないか。住民基本台帳で十分ではないのか。(2010.9.15)

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