ステファン・エセル氏追悼

 ステファン・エセル氏の訃報が伝えられた。95才という。彼が一昨年刊行した『怒れ、憤れ』は豆本にも近いブックレットではあったが、それが与えた影響は地球大的なものであった.。このような歴史的体験を観察できたことは閉塞感漂う時代にはまれなことであった。
 若者に対する「檄文」と名付けられるこの書物には、彼がほぼ1世紀に近い歩みで抱いた怒りの系譜を回顧しながら、若者に怒り、怒りの対象に関わることを求めたのであった。
 この書物は世界中で翻訳、出版され、ウォール街占拠をはじめとして抗議する若者たちに読まれたという。私は昨年2月に本書をブログ上で紹介し、日本の若者にも影響が現れることを期待した(www.focusglobal.org/kitanihito_blog/bp201112.html)。残念ながら本を読む習慣も失せ、怒ることを忘れた若者にこの書物の影響はほとんどなかったようだ。何故なのか、その理由をじっくり腰をすえて考えてみなければならない。
 逆に私は、この書物によって目を開かされた。過去をただの繰り言としてではなく。生きた時代への関わりを語り続けることは私の年代の責任ではないか。ただ個人主義が危機に瀕しているこの国で、守られることなく主張し続けることは危ういことだ。それでも書くべきことは書かねばならない、そういう時代に直面しているのだ。
 遺著は近くフランスで出版されるという。このような時代に日本ではたして翻訳されるだろうか。
  エセル氏の冥福をお祈り申しあげる。(2013.3.2)

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