ヨーロッパの馬肉混入スキャンダルに思うー食のグローバル化、工業化がもたらすもの(再論)ー

 某テレビ局のニュース番組を見ていると、キャスター曰く、ヨーロッパの流通は複雑ですからねと、今回の馬肉混入スキャンダルはヨーロッパに特有の現象と言わんばかりの解説をしていたのに驚かされた。とんでもない、日本の外食産業の食料仕入・流通経路のの複雑さと長さはヨーロッパの比ではない。その現実は安全性が極端に脅かされる事態が発生すると問題視されるが、それ以外は消費者のほとんどは関心を示すことがない。
 一つの例をあげよう。日本人の大好きなエビはどこから来ているか。その主力商品であるブラックタイガーは東南アジア、南アジアで養殖・加工され、日本に運ばれる。数年前ベトナムのホーチミン市近郊でこの養殖エビの加工工場を見学したことがある。工場では、アメリカNASAが宇宙食のために開発したHASSPの規定に従って製造され、この工場の内部に関する限り安全性に問題があるようには見えなかった。しかし、農民たちがメコン川汽水域でどんな養殖をやっているのか、その安全性についてはわかったものではない。
 興味をひいたのは、そこで行われていたのはエビの頭を取り、背わたを取るだけではなかったことだ。日本向けの製品にはパン粉をつけて冷凍したエビフライ半製品があった。解凍して油であげると簡単にエビフライができる。エビフライの前工程はこの工場でほとんど終わっているも同然であった。
 工場側の説明ではこれをフライにして冷凍し輸出する準備を進めているという。これはもう実現しているのだろう。日本人の好みに合うパン粉や食用油はどこで調達しているのだろうか。まさか日本で調達してベトナムに送っているとは考えにくい。いや、そのようなことをやっているのかもしれない。どうもここにも複雑で奇怪なからくりのにおいがする。私たちがコンビニで買うフライ食品のラベルのどこを見てもその複雑なからくりを示してくれない。
 この例からも明らかなように、私たちはヨーロッパの市民よりもはるかに怪しげなものを食しているのだ。しかもヨーロッパの場合、食品に関するさまざまなEU共通規則で消費者が保護されている。日本の場合、そのような協定が中国やベトナムと結ばれているという話を聞いたことはない。
 ベトナムを調査したときの話だが、ヨーロッパの業者はベトナムの製造元にヨーロッパの基準や規則にしたがって製造するよう指導しているが、日本のメーカーの指導は不十分だという現地駐在員の話も漏れ聞こえてきた。安けりゃいいと言うことなのだろうか。見てくれが整っていれば良いと言うことなのだろうか。
 私たちはヨーロッパ以上に不安定な供給・調達に依存して暮らしている。前回も書いたように、食の安全性に関わるだけでなく、地球に対する負荷を大きく重くしている。ヨーロッパに学んで、日本の現実を精査し、熟慮すべき時ではないだろうか。(2013.3.10)

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