「汽車通学」略して「汽車通」(続)

 先日あるテレビ番組で北海道の早春の風景を移していた。それを見て思い出したことを書き留めておきたい。
 氷と根雪の世界から解放される北海道の早春の雰囲気とそれに浸る感情の高ぶりは今も忘れられない。あの頃春の訪れを最初に告げてくれくれたのは汽車通の同級生だった。根雪が溶けて凍土が太陽の光で本来の湿りを取り戻し始めると福寿草が顔を出す。それを空き缶に移し替えて教室に持ってきてくれた。雪が溶けるとスズランの季節が来る。手に余るほどの束を教室に持ってきてくれたのはO君ではなかったろうか。数本ずつもらい受けて家に飾った。
 私の高校時代の記憶はほとんどがモノトーンでしか再現されない。しかし春を告げる花々を摘んできてくれた彼らとの交流の記憶はあざやかに残る。
 北海道の早春には雪解けで大地から水蒸気が立ち上る。その香りはどうあがいても思い出せないのがもどかしい。スズランのあれほどの芳香も思い出せない。
 私にとって春はこれだけ長く関西に生きてもなお桜花爛漫の季節であるよりも福寿草とスズランの季節なのだ。(2010.4.18)

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