立命館大学平和ミュージアムで特別展『目・耳・WARー総動員体制と戦意高揚ー』を見る  ーよく並べられているが、大いに不満が残るー

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 久しぶりに洛北の立命館大学あたりにでかけ、平和ミュージアムで特別展『目・耳・WARー総動員体制と戦意高揚ー』を見た。前の戦争下での情報操作による戦意高揚宣伝ついての資料がよく集められ、並べられている。このミュージアムは、過去の戦争ににとどまらず世界中の紛争に市民の注意を喚起するという点で貴重な存在である。
 このような企画を取り上げてもらえるのはうれしいことだが、過去の戦争を体験した世代に属する一人として大いに不満が残った。権力の側の宣伝の多様さは示されてはいるものの、あの展示をみて戦争の狂気を感じ取れるとは思われなかった。戦争を体験したものと体験しなかった若い世代との認識の違いだろうか。そうではないと思う。企画者の過去の戦争のとらえ方に問題があるのではないだろうか。
 太平洋戦争下の宣伝工作は、私の少年時代の記憶では、海軍、空軍の主力を失い、兵士も失った戦局の悪化が明らかになったあたりを境に宣伝工作は大転換したように思う。兵士不足を補うべく学生の兵役免除を取り消し、徴兵年齢を引き上げ、社会全体の兵営化を進めた。治安維持法によるリベラルな知識人や大学教授の検挙が始まったのもこの頃だと思う。
 もはや「本土決戦」を叫ぶ以外に道はなかった。厭戦気分を払拭し、戦意高揚をはかるために、あらゆる宣伝手段が動員された。あの頃の記憶に残る宣伝物がほとんどないのだ。敵に対する憎悪を煽る狂気のスローガンも、玉砕した兵士たちの悲惨を天皇に対する忠義と軍部に対する忠誠にすり替える宣伝活動も、示さされてはいない。あの時期こそが戦争だったのだ。
 最大の宣伝工作は、神国日本の軍隊はかくかくたる戦果を上げていると声高に主張する大本営発表であった。ラジオから流れる独特のアナウンスはいまでも私の耳に残る。
 情報を独占し虚偽の情報を宣伝し続けて戦争の終結を遅らせ、国民に塗炭の苦しみを与え続けた権力の中枢にいた支配者たちを私は今も許すことができない。(機密)情報が権力の内部でもはたして共有されていたのかどうかは、まだ十分に解明されてはいない。しかし、情報を独占する権力を批判する力が暴力的に抑圧されるとき、その結末は明らかだ。歴史から学ぶ時ではないだろうか。
 そうはいいながら、この時代にあのような展示を企画したことには敬意を表する。しかし私には不満は残る。
(2013年12月14日)

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